【原発事故汚染水の海洋放出】内堀知事、小早川社長の言葉

新着情報

 きのう8月22日午後2時半、西村康稔経済産業相が福島県庁を訪れ、内堀雅雄県知事や、東電福島第一原発が立地する大熊町・双葉町の両町長吉田淳氏伊澤史朗氏)と面会しました。西村氏は面会後すぐ移動し、報道対応を行いませんでした。

 続いて午後3時半、こんどは東京電力ホールディングス小早川智明社長が訪問。内堀知事、吉田町長、伊澤町長の3氏と面会を行いました。終了後、内堀知事ら3氏がまず報道陣の囲み取材に応じ、その後小早川社長も取材対応を行いました。

 囲み取材の中で重要だと思った部分を紹介します。なるべく雰囲気も含めて正確に知ってもらいたいので、書いている部分はノーカットです。(文・写真/ウネリウネラ 牧内昇平)


福島県・内堀知事の言葉

内堀知事(右)。左は双葉町の伊澤史朗町長
記者:(※大熊・双葉両町長に質問してから)もう一問、知事にいいですか。関係者の理解についてなんですけれども、きのうの全漁連と岸田総理とのやりとりで、結局はですね、「科学的な理解」というところに収れんしてしまったのではないかという印象を受けます。漁師たちは「科学的な理解」というのは、今も知事がおっしゃっていましたが、一般の人よりもよくご存じで、「科学的なことではない理解」についていろいろとお話をされていたわけです。結果として約束は守られたとお考えですか。
内堀氏:非常に重要なご質問だと思います。「科学的な理解」と「社会的安心」は別だというお話。全漁連の坂本会長はおっしゃっておられました。一方で、「理解は一定程度進んでいる」という発言をする。そしてまた、県漁連ですが専務が出席をされて、「約束は果たされていない。けれど約束は破られていないとも考えている」と言っておられます。実は全漁連の皆さん、「理解は進んでいる」と言いながら「反対の立ち位置は変わらない」ということも言っておられます。私常々、この原子力災害の問題には葛藤がつきまとうんだ。複雑で多様で、それぞれの立場で異なる意見がある。そしてそれぞれ、本当にそれが重要であり、正解だという思いで真剣に述べているということを、定例会見等の場で申し上げてきました。今、大熊町長、双葉町長も、この場であえてそういう思いで言われていると思います。原子力災害の問題はもともとが不条理、理不尽な問題ですので、なかなかこう、葛藤なくですね、整理するということは難しい問題かと思います。したがって今回の約束の問題についても、私自身、きょう県漁連の野崎会長とお話しましたが、詳しくは言われませんでしたが、間違いなく心の中に、すごく複雑な思い、葛藤をもって私とお話をしてくれているなということは、肌で感じました。昨日野崎会長自身は東京に行くことができなかったので、これからまた西村大臣との会議に臨まれるという風にうかがっております。こういった葛藤等も含めですね、約束の問題も、昨日どんな思いで、あの言葉を県漁連の専務が、あるいは全漁連の会長さんたちがお話したのか、そういうことも心の真ん中に置いたうえで、政府東京電力においてはこの処理水の問題に誠心誠意取り組んでいただきたいと思います。
今の質問をした記者:ありがとうございます。
県庁の広報担当:では、申し訳ありませんが…。
(それ以前から筆者ウネリは最前列で挙手しているが、広報担当は会見を終わろうとする。内堀氏が筆者の方を指す)
県庁の広報担当:(知事のほうを見て)よろしいですか?
内堀氏:いいですよ。
ウネリ:フリーランスの牧内といいますが、何点かうかがいます。
内堀氏:すみません。時間の関係があるので一点でお願いします。
ウネリ:一点?
内堀氏:はい。
ウネリ:これまで何度も聞かれていると思いますが、そもそも内堀さんは海洋放出に賛成なんでしょうか、反対なんでしょうか。理解を示しているのでしょうか、示していないのか。その点を明らかにしてもらいたいと思います。
内堀氏:はい。今ですね、二つの中の選択肢で選んでくれというお話をしました。きょう私が経済産業大臣そして東京電力の社長にお話した内容、非常に複雑多岐な内容を含んでいます。漁業者の皆さんの思いも含んでいます。また、処理水の海洋放出に反対の方の意見も入っています。一方で、まさにこの、立地自治体であったり、避難地域12市町村の復興を前に進めたい、あるいは福島県の風評というものをしっかりなくしていきたいという県民の皆さんの思いも入っています。二つの選択肢の中のどちらかを選ぶということは、原子力災害の問題では極めて困難だと考えています。そのうえで、広域自治体である県としては、それぞれの立場の真剣な思いというものを福島県の意見の中に取り入れつつ、これまで政府高官に対する要請を21回、また、復興推進委員会、復興再生協議会等の場において26回、この2年4か月の間にお話をしてきました。一言で結論を出すことが難しい、それがこの原子力災害の葛藤だと考えています。
ウネリ:政治家としては決断を下すのが仕事だと、
内堀氏:(再質問している筆者から目を背けてほかの新聞記者を指し)お願いします。
県庁の広報担当:一問限りでお願いいたします。
ウネリ:ダメなんですか?
県庁の広報担当:(無回答のまま)じゃ、河北新報さん。
内堀氏:(ほかの新聞記者のほうを向いて)どうぞ。
記者:はい。先程来、お二人の町長から中間貯蔵施設の問題の話も出ましたが、今回の処理水の放出と通底している問題としてやっぱり合意形成なんだと思います。今回やっぱり事故直後からいずれ処理水をどうにかしないと言われつつ十年以上経過しつつやはり合意形成は十分だったのかと言わざるを得ない、と考えていますけれども、今後中間貯蔵施設の土の問題であるとか、あるいはデブリを取り出した後どうするかとか、おんなじ論点があり、おんなじ問題がずっと続いていくんだと思うんですね。今回の処理水の議論の経過で、合意形成の部分でですね、どういうところが足りなかった、あるいは反省しなければならない、こういったところで国と東電には今後何を求めていかなきゃいけないか、そういったところをどうお考えですか。
内堀氏:はい。あの非常に重要な質問なんですが、難しいご質問だと思います。まず、それを答えるべき立場は、政府であり、東京電力だと思います。中間貯蔵施設の場合は、県また立地自治体が明確にですね、受け入れについて何らかの判断を下さなければいけないという状況でありました。でまた一方で、今回の処理水の問題、横山さんがお話をされ、先ほど牧内さんもお話がありましたが、やはり非常に時間がかかる中の合意形成、困難な部分があった、そして先ほども申し上げましたが、昨日の全漁連あるいは県漁連、福島県漁連だけでなく隣県の県漁連の代表の方も出ておられましたが、非常に複雑な思いをもって総理との意見交換に臨まれていると思います。この合意形成のやり方、何か明快な正解があるわけではないと思いますが、私自身がやはり難しいながらも大事だなと思うのは、やはり情報発信をですね、丁寧に行っていくことだと思います。正確な情報をですね、日々国内外に伝え続けること、そしてその中で風評対策を減らしていくことは必ずできると思います。現実に福島県の農産物のお話、御承知のとおり、原発事故が起きた直後は55の国・地域が福島県産の農産物に対する輸入規制をかけておられました。けれど今は7つの国・地域まで減りました。この半年でも、5つの国・地域が解除していただきましたが、やはりこの間12年かかっているんです。なので、やはり時間がかかるかからないという論点ももちろん大事なんですが、やはり丁寧にコミュニケーションを続けて、一つ一つ理解を得ていく。この道筋はやはり重要なのかなと考えております。

東電小早川社長の言葉

東電HDの小早川社長(中央)
ウネリ:ありがとうございます。フリーランスの牧内昇平と申します。1点うかがいます。先ほど内堀知事とのお話うかがいまして、「安全性の確保」ということに関して非常に力を込めてお話されておられると思いました。もし仮にですね、万が一、基準を超えるような汚染水が放出された場合に、それは誰の責任になるのか、小早川社長の責任問題に発展すると考えてよろしいのかどうか。その点をお聞かせください。
小早川氏:はい。まず、「汚染水」を放出ということはオペレーションの中には入れておりませんで、あくまで放出する前の段階で、すでに規制基準を満たした形でスタンバイさせるという保守的なオペレーションを組んでおります。ですので、仮定のお話ではありますけれども、我々とすれば、そうしたサプライズ、ハプニングが起きないようにしっかりとオペレーションしていくことこそがですね、やはり我々の責任だと思いますし、今日、内堀知事からもそこは野崎会長のお言葉を借りて、そういうことは避けてほしいと、想定外は避けてほしいというお話がありましたし、伊沢町長からもですね、ヒューマンエラーが一番心配だということをおっしゃっていましたので、緊張感を持って取り組んでまいりたいと思いますが、いずれにしましても廃炉を進めていく上での総責任者は私となりますので、何かあった場合は私の責任ということでございます。
ウネリ:万が一ヒューマンエラーや想定外が起こった場合は、社長の責任問題になるというコミットメントとして受け止めてよろしいですか小早川氏:私の責任のもとで、そういったことがないように、安全に作業を進めるように、指示してまいります。
東電幹部と面会する内堀知事ら3氏

【ウネリウネラから一言】

 この期に及んで内堀氏は「汚染水の海洋放出をどう考えるか」という重要問題について福島県知事としての判断を示しませんでした。「原子力災害の問題では二つの選択肢のどちらかを選ぶのが極めて困難だ」と言っていました。しかし、いろいろな人と話し合ったうえで、正解のない問題に決断を下すのが政治家の仕事ではないでしょうか。

(※関連する追加質問を制限されるようでは実のある議論ができません。最初から「内堀さん、あなたに対して海洋放出への賛否を聞いてもどうせ答えないと思いますが、それは政治家の仕事を放棄していることになりませんか?」と聞けばいいのでしょうか。それは失礼だと思います)

 東電の小早川社長は、内堀氏らに対して「安全を守ります」と強調していたものの、もしも想定外の出来事が起きた場合の責任の取り方を明確にしませんでした。「何かあったら自分が責任を取る」とは言わず、「自分の責任のもとで安全に作業を進めるように指示する」という言い方でした。

 内堀氏の言葉も、小早川氏の言葉も、直接聞いた筆者の「心の真ん中」(内堀氏風)には、釈然としないものが残りました。


皆さまのご意見を募集します

 海洋放出問題について、皆さまのご意見を募集します。長いものも短いものも、海洋放出を支持する声も反対する声もすべて歓迎です。お待ちしております。

※これまでにもたくさんのご意見をもらっておきながら、「みなさんの声」シリーズの更新が遅れております。誠に申し訳ありません。また、いただいたご意見に対しては、ウネリウネラから掲載の可否を聞くメールを送っています。メールで直接意思確認できた人のみ、サイトへの掲載・編集作業をしています。もし「投稿したのにメールが来ない」という方がいましたら、恐れ入りますが、uneriunera@gmail.comにご一報ください。

     

    コメント

    タイトルとURLをコピーしました