生業訴訟はあきらめない~第2陣、473人の追加提訴~

6月17日、原発事故を起こした「国の法的責任」を問う集団訴訟4件(群馬・千葉・福島・愛媛)に対して、最高裁は「国に責任なし」という判決を言い渡した。提訴した住民たちは意気消沈……と思ったら、大間違いだ。

事故後も福島県内に住んでいる人を中心とした「生業を返せ、地域を返せ!福島原発訴訟(生業訴訟)」は、遅れて提訴した「第2陣」の裁判が今も福島地裁で続いている。県内各地で原告募集の説明会をくり返し開き、9月5日の口頭弁論に合わせて、473人の大規模な追加提訴を行った。これで「第2陣」の原告数は1600人超。裁判が終わった「第1陣」と合わせると、その数は約5500人にのぼる。同訴訟原告団と弁護団は「第2陣で勝ち、6月17日の最高裁判決をひっくり返す!」と意気込んでいる。(ウネリウネラ・牧内昇平)


9月5日の法廷では

9月5日午後2時15分、福島地裁第203号法廷で、生業訴訟第2陣の口頭弁論が開かれた。

原告の一人、大熊町に住んでいた女性が意見陳述を行った。

女性は、原発事故後、田村市や磐梯町など、避難先を転々とした。今は郡山市で一人で暮らしている。事故前まで一緒に暮らしていた長女は、東京で働くようになった。事故のせいで、長女と一緒に暮らすことができなくなった。

事故前に暮らしていた大熊町の町営住宅は、今年6月30日に避難指示が解除された地域にありますが、避難してからずっと放置されていましたので、住めるような状態ではありません。大熊町からは町営住宅の解体に関する通知が届いただけです。荷物や家財道具も残していましたが、今さらどうすることもできないので、すべて処分することに同意しました。
娘は、今は東京で仕事に就いて忙しくしており、私から郡山で一緒に暮らしてほしいとお願いすることはできません。私が東京に行くことを考えたこともありますが、娘の負担になると思いますし、現実的に無理です。お互いにどうにかしたいとは思ってはいるのでしょうけれど、言葉にできません。「お母さんと一緒に住んでくれる人と結婚するよ」と言ってくれた優しい娘です。事故前は毎日一緒に生活し、ずっと長女と一緒に生活していけると思っていました。もしできたら新しい家を建てて一緒に住もうかという話もしていたのに、本当に残念でなりません。
過去をふりかえると、情けなく、辛くなります。現実にはどうしようもありません。11年経っても同じなのかと感じていますが、なるべく先のことは考えないようにしています。ただ、人生はこんなに簡単に変えられてしまうのだなと思わずにはいられず、悔しくてなりません。

原告意見陳述の一部

今回に限ったことではないが、原告ご本人が時に涙を浮かべて語るのを聞くと、心を揺さぶられる。いま、このような思いで暮らしている人がいることを、多くの人びとに知ってもらいたいと思う。


「最高裁判決(多数意見)は覆されるべきだ」

大熊町に住む女性の意見陳述後、原告側の馬奈木厳太郎弁護士がこう述べた。

「最高裁の多数意見(※)は、速やかに覆されなければならず、それは、生業訴訟第2陣、すなわちこの福島地裁においてこそ、先鞭がつけられなければなりません!」

※6月17日の最高裁判決には、三浦守裁判官による「反対意見」(少数意見)がついた。三浦氏は、事故を起こした国の法的責任を明確に認めた。生業訴訟の弁護団・原告団は「三浦反対意見こそ、あるべき最高裁判決だ」と主張し、実際の最高裁判決を「多数意見」と呼ぶ

馬奈木氏は法廷で、「6月17日の最高裁判決(多数意見)はここがおかしい」というのを、福島地裁の裁判官に語った。ポイントを筆者なりにまとめておく。

・最高裁の多数意見は、「事故前の津波対策は防潮堤一択だった」としているが、それは間違いだ。防潮堤が完成するまでの対策として、「水密化」(建物や設備を水から守ること)を行うことはできた。多数意見は、このことを全然検討していない

・生業訴訟だけでなく、全国の同種の訴訟では、「事故を予見(予測)できたか」が最大の争点になってきた。ところが、多数意見は、この「予見可能性」について全く判断を示していない

・原発はいったん過酷事故が起きたら、多くの人の命や健康、生活基盤に大きな影響をおよぼす。だから国に対しては、「深刻な災害が万が一にも起こらないようにする」ための厳格な規制(安全性のチェック)が求められている。このことは過去の最高裁判決(伊方最高裁判決)に書かれている。今回の多数意見は、この伊方最高裁判決に言及していない「国はどんな、どの程度の、規制をすべきか」について判断を示さないのは、今回の多数意見の大きな欠陥である。


次回期日は来年1月23日

次回の口頭弁論は来年1月23日に予定されている。原告たちはさらなる追加提訴も目指しているという。生業訴訟第2陣は今後どうなるのか。また、全国の高裁で続いている同種の訴訟で、6月17日の最高裁判決をひっくり返す結果は出てくるのか。注目していきたい。

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