【生業訴訟】「勝訴後」見据えた原告団総会

 原発事故を起こした国・東電の法的責任を追及する「生業訴訟」。合計5000人超という同種訴訟で最大規模の原告たちは4月16日、福島県二本松市で原告団総会を開いた。今夏にも最高裁判決が言い渡される見通しだが、原告団はむしろ「勝訴後」を見すえた議論を展開した。(ウネリウネラ・牧内昇平)


「二度と原発事故を起こしたくない。こんな苦労は、日本中、世界中、誰にも味わわせてはならない。そういう切実な思いで皆さんは原告団に加わっていると私は信じます。あるべきことをきっちり追求していきましょう。『原発再稼動ではなくて、再生可能エネルギーの道に戻れ』と。『被害者に向き合い、しっかり賠償しろ』と」

 総会の冒頭、原告団長の中島孝氏が演台に立った。中島氏が強調したのは「最高裁で勝訴判決を得ること」ではなかった。その勝訴判決を「次につなげること」だった。

「裁判に加わった原告だけが救済されればいいとは考えません。(裁判をしていない人も含めて)すべての人たちを救済させること。これが生業訴訟の原告一人一人の思いです。この裁判をきっちりと勝って、国の責任を確定させて、私たちの願いである『全体救済』、救済法を作らせる。そのように政府の姿勢を改めさせる!」

 生業訴訟は福島地裁、仙台高裁で国と東電の法的責任を認める判決を勝ち取ってきた。最高裁も3月2日、東電の上告を退ける決定を下している。

 残るは「国の法的責任」だ。

 最高裁第二小法廷は「生業訴訟」のほか、千葉、群馬、愛媛で提訴された合計4訴訟を一括して審理。4~5月に各訴訟の弁論を開き、今夏にも判決を言い渡す予定だ。

 4訴訟のなかには高裁で国の責任が認められなかった例もある。しかし、今日の総会を見る限り、「生業」の原告団・弁護団は勝訴できるかを心配していない。「勝訴後」を見すえている。中島氏に続いて演台に立った弁護団事務局長、馬奈木厳太郎氏が話す。

「勝訴判決を得ることは確信しています。ただ、判決は紙切れにすぎません。判決文が勝手に一人で歩きだして、法律や制度を作ってくれるわけではない。国は『責任がある』という最高裁判決が出れば、心を入れ替えて政策を改めるか。そんなに甘くないです」

 原発事故について、これまで国はある意味で「第三者」的な立場を取ってきた。事故を起こしたのは東電の原発であり、国は直接的な当事者ではないという認識だった。しかし、最高裁が「国に法的責任あり」と認めれば、こんなスタンスは許されなくなる。すべての政策決定は「国にも法的責任がある」ということを前提に考え直す必要が生じる――。

 理屈ではその通りだ。しかし、最高裁判決が出れば、物事が全て原告団の思う通りに進むわけではない。判決をてこにして、社会を動かす必要がある。

 馬奈木氏が指摘したのは、たとえば汚染水の海洋放出だ。

「今まで国は『当事者ではない』という顔をして『海に流しましょう』という話をしてきたわけです。放射性物質によって一度汚染されてしまった福島において、私たちが海洋放出に同意することがあったならば、二回目の汚染を私たちが受け入れることになります。断固として認められない。国は加害者だ当事者だとなっても、みんなのものである海になぜ流せるのか? そういう風な世論を作っていかなければなりません」

 生業訴訟の原告団が国や東電に求めているものは山ほどある。2020年7月に作成された「要求項目」を紹介する。

  • 加害責任を認め、真摯に謝罪すること
  • 事故前の汚染されていない環境の回復のための措置を行うこと
  • 加害責任を踏まえて中間指針(賠償基準)をすみやかに見直し、被害を完全に賠償すること
  • 追加被ばくによる健康被害リスクの回避、低減に向けた医療・健康管理対策
  • 事故前の生活を再建するための万全の措置
  • 放射線や放射性物質に関する適切な教育
  • 原発への依存を改め、福島第一原発の廃炉における安全確保に万全を期すこと

 最高裁で勝訴したら、「生業」の原告団はこのような内容を求めていくことだろう。原告団事務局長の服部浩幸氏はこう話した。

「国に勝つことの意義は、国に対して『責任があることが認められたんだから、本気で救済制度、救済のための法整備に取り組みなさいよ』と言える、ということです。そしてまず、謝罪です。首相にも東電の社長にも、私たち被害者の前で、自分の言葉で本当に真摯に、謝ってもらう。形だけの謝罪は受け入れない。真摯な謝罪を求める」

 要求を実現させるために何が必要なのか。服部氏が強調したのは「原告団の拡大」だった。

 生業訴訟の原告団は第一陣と第二陣に分かれている。最高裁に進んでいるのは、2013年に提訴した第一陣。遅れて福島地裁に提訴した第二陣は今も原告の新規募集を続けている。一・二陣合わせて合計5000人を超える原告数は、約30カ所で起っている原発事故集団訴訟の中でも最大規模である。しかし、これを1万人にまで広げるのが目標だという。大規模な追加提訴によって、困っている人、怒っている人がまだまだいることを目に見える形で伝えることができる。それが「原告にとどまらない全体救済」につながる、という狙いがある。

 服部氏は最後にこう話し、今後の運動方針の説明を結んだ。

「最終的に実現しなければならないのは、原発をなくすことです。それが本当のわたしたちの要求です。さまざまな運動を繰り広げて、脱原発のリーダーシップをとります」


 「生業」の最高裁弁論は4月25日。それを受けて最高裁が判決を言い渡すのは早ければ6月と言われている。ウネリウネラは今後もウォッチを続ける。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。