【原発事故、賠償基準の見直しを!】集団訴訟原告たちの声

 原発事故集団訴訟の原告たちが3月28日、賠償基準の見直しに注力するよう、福島県に対して要請を行いました。前回の記事「原告団が福島県庁に申し入れ」ではQ&A形式で背景を説明しましたが、今回は要請に参加した原告や弁護士たちの言葉を紹介します。「もっと先頭に立って取り組んでくれ」という福島県庁に対する気持ちがこもっているように思います。

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●瀬尾誠さん(千葉訴訟)

 浪江町に住んでいて、今は長野に避難しています。県庁の担当課の人に今日お会いして、その感想をひとことで言うと、「どうも弱腰だな」と思いました。被害者が「まだまだ被害は終わっていない」と言っているのに、福島県庁の方は「原賠審の判断で見直すだろう」というような言い方をされていて、こちらは非常に心もとないと感じました。「福島県は県民の状況が本当に分かっているんだろうか」ということについて改めて疑問をもち、そのことを担当の方に伝えました。

●丹治杉江さん(群馬訴訟)

 いわき市から群馬に避難しています。「自力避難」と自分では言っていますが、「自主避難」の区分に入ると思います。県外に避難していると、福島が今どのような状況にあって、困難を抱えている人たちをどういう風に救済していくのかということが、全く見えないまま、「復興」という言葉だけが11年の中で目立ってきているという気がしてなりません。群馬に避難した皆さんが一番抱えているのは経済的困難です。「母子家庭になってしまった」という方が私たち原告の中にはたくさんいます。「二重生活」そして特に「自主避難」という区分になった方は、医療や住宅への支援とか、故郷に帰る時の交通費の支援とか、そういうものは今、まったくありません。まったくの自力で生活を立てているという実態があります。

 私が群馬の仲間たちとこの裁判を闘ってきて思うのは、迅速かつ適正な賠償を一日も早くしてほしい、ということです。11年もかかっています。群馬の原告たちは少ないですが、もう4人も亡くなってしまいました。また、私たちの仲間の中には、悪性リンパ腫になった人、いじめで学校に通えなくなった子ども、本当に深刻な困難を抱えた家庭が数件あります。そうした方々に対して、「積極的に救済していくよ」という発信を、福島県からしてほしいと強く思っています。

●中島孝さん(福島・生業訴訟)

 この間、避難の費用だったり営業損害だったりを弁済してほしいという要求をしている集団ADRが、東電から要求を蹴られてきた実態があります。きょうの話し合いでは、福島県から「最高裁決定を使って、積極的な被害救済に取り組む」という力強い表明をしていただきたかった。ところが、今日はそういう風にはならなかったです。

 県知事からも明確な発信はありません。我々生業訴訟が当初からうったえてきたのは「全体救済」です。福島県民の福祉の増進、やわらかい言葉で言えば、我々の命と暮らしを守る責任が、内堀県知事にはあるわけです。その大きな責任を第一番に果たすべきだと思います。

 丹治さんも瀬尾さんもおっしゃったように、自主的避難区域から避難された方は、非常な経済的困難を抱えてこの11年を暮らしてこられました。また、私のように県内で営業をやっている者は、営業損害への賠償が早々に、2017年に切られるということがあって、生活の再建が不十分なままで今日に至っています。そういう中で、トリチウム汚染水を海に流すというような問題についても、福島大学などの専門家の方が抜本的な地下水流入防止策を提起しているにもかかわらず、国も県も、そうした専門家の意見に十分な関心をもって研究を行っているとは見えません。

 こういう行政の遅れを見ますと、3月2日の最高裁決定は、「何をやっているんだ。被害者を早く救済せよ」ということで、行政の頭越しに救済の道を示してくれているのだと思います。こうした最高裁決定を今すぐ、県知事が取り入れて、被害救済のきっかけにしてほしいです。

●馬奈木厳太郎弁護士(生業訴訟弁護団)

 高裁判決が示した賠償水準というのは、被害実態に見合ったものであるとは到底言えません。極めて低い水準にとどまっています。しかしながら、中間指針(原賠審が決めた賠償基準)の賠償対象地域を拡大させ、賠償の水準についても上積みしています。そういった高裁判決が確定したということは、中間指針を超える損害があるということを最高裁が認めたことになります。東京電力などは中間指針を超える損害はないという立場ですから、そういった意味で大変重要な判断だと思っています。

 また、生業訴訟については「代表立証、共通損害、一律賠償」という判断枠組みです。つまり、区域ごとに「誰であっても少なくともこれだけの精神的苦痛に関わる損害を被ったであろうという損害」を請求してきました。判決も「区域ごとにいくら」という形で判断を示しています。言ってみれば、仙台高裁は、原賠審に成り代わって、中間指針の見直しをしたと考えています。そうであるならば、本当の原賠審は、このままでよろしいんですか?という問題意識です。中間指針では賠償の対象となっていなかった、たとえば会津とか、県南とか、そういった地域を含めて賠償対象地域と認められるようになりました。いわば福島県の全地域が損害を被っているということになった訳ですから、福島県としても、これを放置しておくわけにはいかないだろうということです。

 中間指針を被害実態に見合った方向で、被害者自身が関与し、少しでも納得できるような形に、改めるべきだと考えています。

 私たちの要請に対する福島県の今のところのスタンスですが、「指針の見直しは、県としてもこれまで何度か申し入れた経緯がある」とのことでした(※この日の要請に対応したのは、福島県庁の原子力損害対策課長)。「原賠審において専門家の方々の議論がなされるであろう」と、若干主体性が感じられないご発言でした。それに対して私たちは「もう判決が確定しました。今までとは局面が違うと思います。福島県として、より主体的に、強い姿勢で、原賠審に対して指針の見直しを求めていただきたい」と申し上げました。知事自らリーダーシップを取ってもらいたいと申し上げました。

 福島県全域を賠償対象地域とする判決が確定したにもかかわらず、原賠審に対して、より強く関与しなければいけないという福島県の意識は、残念ながらまだまだ弱いな、というのが率直なところです。引き続き求めていきたいと思います。

 今回の最高裁決定というのは、福島県民みなさんに関わる決定だったと思っています。そういった最高裁決定の意義を、福島県にはきちんと理解してもらいたいというのが私たちの願いです。原告になってない方も含めて、被害者全体の救済のために、誰がイニシアティブをとるべきか。福島県だろう。福島県がイニシアティブをとるべきだというのが私たちの考えです。そのことを改めて申し上げて、きょうの申し入れを終了しました。

(おわり)

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