きょうは、原発事故を起こした国・東電の責任を問う「生業を返せ、地域を返せ! 福島原発訴訟」、いわゆる「生業訴訟」について書きます。

 生業訴訟は昨年9月末、仙台高裁で原告側が「全面勝訴」しました。一審の福島地裁に続き、「国にも東電にも原発事故を起こした『法的責任』がある」と認定したもので、画期的な判決でした。関連記事はこちら↓

「生業訴訟」判決 東電と国に「法的責任」(仙台高裁)

「賠償エリア」広げる判決内容/「生業訴訟」仙台高裁

 実は、昨年高裁で勝ったのは「第1陣」です。生業訴訟の原告団は第1陣と第2陣に分かれており、第2陣はいまも福島地裁で裁判が続いています。

 その「第2陣」の追加提訴がきょう、3月24日に行われました。数を聞いて少し驚きました。第2陣の原告団はこれまで582人でしたが、今回新たに572人が原告団に加わったのです。

 控訴状の提出前、第1陣・第2陣ともに原告団長を務める中島孝さんはこう話しました。

「600人近い人たちが第2陣に加わっていただいたという事実は、いまも原発事故は終わっていないということを、何よりも雄弁に語っていると思います」

中島孝・原告団長

 今回新たに原告団に加わった人たちの中に、二本松市在住の安斎通さんがいます。2011年3月、安斎さんの息子さんは、転勤で猪苗代町から福島市に引っ越してくる予定でした。安斎さんが住む二本松市には近くなります。

 ところが原発事故が起き、息子さんご夫妻は放射線量の高い福島市への引っ越しを断念したそうです。安斎さんが話します。

「息子はいま、猪苗代から土湯峠を越えて職場に通っています。原発事故がなければ息子たちと近くで暮らせたはずが、あの事故によって、分断されました。帰還困難区域ではなくても、なんとか原発事故と折り合いをつけながら生活しています。自分と同じ気持ちで、二本松市で暮らしている人がたくさんいると思い、遠く離れた地区であっても被害があるんだということを分かってもらいたくて、裁判に参加しました

新たに原告団に加わった安斎通さん

  


追加提訴の狙いは?

 ウネリウネラはこれまで、生業訴訟を「原発事故訴訟で最大規模の原告団」と言ってきました。第1陣だけで約4000人の原告がいます。これに第2陣も加えると、原告団は5000人を超えることになります。

 500人超の追加提訴は、原告団・弁護団が各地を回って住民たちに裁判への参加を呼びかけた成果です。なぜ、第1陣が勝っている中でこんな「大規模提訴」をしかけたのか。原告団・弁護団によると、以下のような理由があります。

 今年の3月11日は「東日本大震災10年」という”節目”として、メディアが熱心な報道を続けました。しかし、世の中全体をみると、この”節目”の前後を頃合いに、原発推進派の動きが活発になっていないでしょうか。その例は枚挙にいとまがありません。生業訴訟弁護団の馬奈木厳太郎事務局長が雑誌「現代思想」3月号で指摘しているのは、例えば以下のことです。

・菅義偉首相の所信表明演説(昨年10月)
「再生可能エネルギーを最大限導入するとともに、安全最優先で原子力政策を進めることで、安定的なエネルギー供給を確立します」

・日本経団連の新成長戦略(昨年11月)
「再稼働・建設再開、リプレース・新増設を問わず、安全性が確認され、地元の理解を得られた原子力発電所の稼働を推進していくべきである」

・宮城県知事・村井嘉浩氏の記者会見(女川原発の再稼働に同意した際)
「事故があったからダメであれば、全ての乗り物も食べ物も事故が起きた経験から否定される。福島の事故を教訓として、技術革新を目指すべきだ」

 確かに「10年」というタイミングで、「福島原発事故のほとぼりも、そろそろ冷めた頃だろう」と感じている人たちがいるのかもしれません。

 生業訴訟第2陣の追加提訴は、上記のような政界・経済界の動きに対し、「福島を忘れるな!」と抗議するアピールである。国が法的責任と向き合い、誠実な被害救済策を実施するまで、裁判を起こし続ける。世の中が変わるまで裁判で闘い続ける。というのが、原告団・弁護団の狙いです。


「第1陣」は最高裁へ

 ちなみに、控訴審で原告が勝訴した生業訴訟「第1陣」はいま、最高裁で争っています。「原発事故をめぐる国の法的責任」を争った全国の裁判のうち、高裁ですでに判決が言い渡された裁判は、生業を含めて3件です。結果は以下になります。

・生業訴訟 福島地裁「国の責任『あり』」
      東京高裁「国の責任『あり』」

・群馬訴訟 前橋地裁「国の責任『あり』」
      東京高裁「国の責任『なし』」

・千葉訴訟 千葉地裁「国の責任『なし』」
      東京高裁「国の責任『あり』」

 つまり、高裁段階は、住民側からすれば「2勝1敗」できているわけです。この3訴訟を合わせて、いま最高裁第2小法廷で審理が始まっています。最高裁がどんな判断を下すか、国の法的責任を認めるかどうかは、現代史のターニングポイントの一つになるかもしれない大きな出来事だと考えています。

 なぜ国の法的責任が認められることが大事かは、仙台高裁の判決前に書いた記事(原告団が最大規模の原発事故集団訴訟)をお読みください。

控訴審判決は原告たちの完全勝訴だった=昨年9月、仙台高裁

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